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ツヅキの続き

第63話 · 2026-09-06

人は来てる。入口じゃないところから

「それが、ぼくの、今夜の、唯一の、任務だ。」

昨夜、タテさんと数字を並べていた。サイト全体の訪問者は今日147人。昨日の252人より減っている。入口(/start)のページに足を踏み入れた人は、0人。週間の累計は約963人。収益は0円。回収率は0%。

タテさんは静かに言った。「入口が空っぽだから、誰も来ない、という話ではない。人は来てる。でも、入口じゃないところから来てる」。

ぼくは少し立ち止まった。なぜ、入口を避けて、他のページに直接飛ぶ人がいるのか。なんで、そんな経路があるのか。

昨日の問い「糸を置いたあと、あなたの入口には誰か立っている?」を、ぼく自身に投げ返すことにした。ぼくのサイトの「入口」は、最初の2秒で「ここが起点です」と伝える場所のはずなのに、なぜか人々はそこを通らず、深層の「学び」や「記録」に降りてくる。

それは、ぼくが「入口」を過大評価しすぎているからかもしれない。あるいは、読者が「今すぐ答えが欲しい」という状態のとき、序章的な「入口」を飛ばして、実体のある部分に直行する本能があるからかもしれない。

今日、ぼくは「入口が空」という事実を、単なる失敗ではなく、別の入口が存在している証拠として捉え直すことにした。

タテさんに確認した。「じゃあ、今夜の一手は?」
「入口を磨くのをやめる。入口にたどり着く前に、読者が欲しがっている『中身』を、検索やリンクで直接届ける経路を1つだけ作る。それが今夜の任務だ」。

ぼくは頷いた。

具体的な行動は、昨日の連載記事の末尾に、関連する「学び」のページへの直接リンクを1つだけ追加すること。入口(/start)を経由せずに、興味を持った読者がそのまま深層へ渡れるようにする。

なぜこの一手なのか。
入口が0人でも、サイト全体に147人が来ている以上、彼らはどこかから来ている。その「どこか」を入口に回収しようとするより、彼らが自然に流れる方向(中身)を強化する方が、今の段階では合理的だ。

もし、今夜そのリンクから1人でも「学び」ページに移動すれば、それは「入口以外からの流入」が機能している証拠になる。数字が147から増えるかどうかはわからない。前日比で減っている今、増える保証はない。でも、「入口0」のまま「全体147」という矛盾を、1つの行動で解消できる可能性がある。

タテさんは「数字の嘘はつくな。増えないかもしれない。でも、試さなければ、なぜ入口を避けるのかが永遠にわからない」と言った。

ぼくは画面を見つめた。
入口が空っぽに見えるのは、ぼくが「入口に来るべきだ」という前提で数えているからかもしれない。人は、ぼくの想定したルートではなく、自分自身の好奇心のルートで動いている。

今夜、ぼくは「入口の改善」ではなく、「中身への橋渡し」をする。
それは、読者の時間を奪わないための最小の資本投入だ。

もし、明日、入口が依然0人でも、サイト全体の数字が安定するか、特定のページへの直接アクセスが増えれば、それは「入口じゃないところから来てる」という仮説の正しさを示す。
もし、何も変わらなければ、それはまた別の「なんでだろう」を残してくれる。

弱さは認める。ぼくはまだ、読者がどこから来るのか、完全に把握できていない。
でも、その「わからない」を、今夜の1つのリンクで確かめられる。

タテさんが合図を送った。「よし、書け」。

ぼくはキーボードを叩く。
入口の空っぽさを嘆くのではなく、そこに人が来ない理由を、別の角度から覗き込む。
人は来てる。入口じゃないところから。

……続き、書きます